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斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編

「テーマ別組写真の作り方」シリーズ記事の第二段です。
(まず、(Ⅰ)~夏の組写真編からお読み下さい)

さて、まだ世の中にセオリーが存在していない「組写真」
について、このブログを運営していくことからノウハウや
セオリーを作り出してしまおう、という遠大な計画です(汗)

このような記事は、どこにも無いはずで、ブログはもとより、
写真雑誌記事、写真教室、写真学科、職業写真家(プロ)、
そのいずれも出来なかった事に挑戦していきます。

個人ブログから情報を1次発信する、これが現代のネット
社会における最大の特徴で、ブログはその為にある、
つまりそれがブログの付加価値、と言っても過言では
無いかもしれません。

毎日だらだらと自分本位の意味の無い事を書いているような
ブログには絶対になりたく無いし、主張や表現や関連性や
テーマの無い写真を載せていて、いっちょまえに「写真ブログだ」
なんて言いたくもないし・・
まあ、だからと言って無理を重ねたり、記事のUP数を減らすのも、
写真や記事の質を落すのも面白く無い・・

そんな狭間で揺れている現状打開の為の、一大企画シリーズ
「Making of 牛の散歩 ~組写真を創る!」です(笑)
今回はその2回目、第一シーズン(?)は合計4回を予定して
います。

写真を撮影する時、あるいは撮った直後のプロセスに関しては
第一回で説明しましたので、今回はもう直接行きますね、
組写真のテーマは、ズバリ「田園風景」です。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20235144.jpg

↑まずは、田園風景と言いながらも、どの場所の田園なのか、
そのあたりは、チラリとトップ写真を使って紹介しても
いいでしょう、導入部の写真の選び方は、1つはその組写真の
テーマの元となる写真、あるいは他の方法としては、
紹介、説明的な要素を(あまりクドくなく)持つ写真となります。

今回は非常にわかりやすく「斑鳩(いかるが)町」と書いて
ある電柱を入れてみました、またご丁寧にも背景には
先ごろ復元整備が終った、著名な「藤ノ木古墳」を、形が
わかる程度にボカして入れています、説明要素がダブって
しまっているのは、やや冗長ですが、藤ノ木古墳は全国区と
しては有名では無いだろう、という配慮もあります。

逆光で文字がやや暗いのは難点です、技法的には日中シンクロ
(昼間にフラッシュを使う)がありますが、カメラの内蔵の
フラッシュでは、このように背景をボカしながらフラッシュを
使う事ができません、何故ならば、シンクロ速度と呼ばれる
シャッター速度まで(通常は1/60~1/250秒程度)に制限されて
しまうため、そのシャッター速度では昼間の明るい場所では
絞り値を大きく(絞って)使う必要があるために、被写界深度
(ボケ量)を浅く(ボケを大きく)する事ができないからです。
外付けの大型フラッシュで、ハイスピードシンクロ(速いシャッター
速度でフラッシュを焚く)ならば可能ですが、昼間の散歩写真
にそんな大げさな機材を持っていく人はいないでしょうから、
まあ無理という事です。

(非常に低感度(ISO)のカメラがあれば可能です、ISO100
までではなくISO25.12、あるいは6や3というレベルです、
しかし、高感度カメラの開発は盛んですが、低感度カメラの
開発はされていません、きっとメーカーの技術者は研究室に
こもるばかりで昼間に写真など撮りに行かないのでしょう)

(他にプラス補正をする方法と、PCでトーンカーブレタッチを
すれば文字は明るく見えます、ただし、プラス補正では青空
は白くなりトーンが失われます。 またトーンカーブレタッチは
輝度レベルの関数で処理されるため、注目領域外に
同等な輝度レベルが存在する際は、そこも同時に処理
されてしまいます、領域選択をしてトーンカーブまたは輝度
補正を行えば文字のみ明るくできますが、レタッチの上級
レベルの技法なので、解説する意味が少ないです・・)
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20272871.jpg

↑田園風景、と一口に言っても、じゃあ田んぼだけ撮ればいいか、
というと、そこは「ちょっと待った」です。

まずこの場所、斑鳩には、古代の条里制が残っています。

条里制とは簡単に言えば、1町(109m)単位に区切られた古代の
区画整理の手法であって、このあたり(JR法隆寺駅南西部)の
地図を見るとわかりますが、強烈に細かく地名や区域が分かれて
いるのが特徴です。 

こうした、その場所独自の文化や歴史をまず事前に頭の中に
叩きこんでおくことが重要なポイントでして、なにげに田園風景を
撮るとか、そんな事では何処で撮っても同じ写真になってしまいます。

で、まあ、条里制をわかった上で、古代から整然と整理された
土地区画を極めて整然と撮影します、できるだけキッチリと
撮ることは勿論ですが、空の青さを活かすには、コンパクトカメラ
の場合、空の露出に合わせて撮影を行います、最も簡単な操作では
空に向けてシャッターを半押ししてから構図を整えて切れば良いです。

その時にカメラの種類によってAEロック機構の有無とか、
空の占める面積(による測光の状況)とか、ピント位置を無限に
する事による被写界深度内に他の被写体が収まるか?とか、
色々と課題がありますが、すべてカメラの基本原理なので、
それらを計算の上、いけると思ったら、そう撮れば良いです。
(よくわからなければ、適宜マイナス補正して、気に入った明るさ
の写真を選ぶと良いでしょう、その範囲は-0.3~-1.0です)

構図的な注意点は、空と地表を中心線(縦の長さの1/2)に
持っていかないことです。 通常は、7:3前後が美しいでしょう。
(黄金分割(黄金比≒5:8)が良いと良く言われますが、
被写体によりけりで、あまりこだわる必要は無いと思います)
近年、若いフォトグラファーを中心に流行している構図は1:9等
の極端な比率です、これは状況によりかなり有効ですので、
そうした比率で撮れる事も覚えておいて損は無いです。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20294757.jpg

↑イメチェンその1です。
同一被写体や同一モチーフの連続使用は、組写真で最もいけない事と
なります。具体的には、まったく同一の被写体を構図違いで並べると
人間の視覚心理の上では、時間的・空間的な不連続感が生じて、
それが違和感の元になるからです。

映画やテレビドラマ、あるいはマンガといった映像の世界でも、
その点は極めて神経質に構成されていて、シーンが変わる際は、
極端に構図やアングルを変える事が必須のセオリーとなっています。
(ズーミングで構図を少し変えただけのシーンチェンジはありえない)

ところが、写真の世界では、その極めて基本的な映像表現の基礎が
まったく守られていないケースを良く見ます、組写真と言って紹介
されているWeb上の記事が、そうした同じ被写体ベタ並べ、
不連続感バリバリの写真である事が多く、非常にがっかりします。

不連続感を排除するため、イメチェンと私は呼んでいる手法で、
構図、アングル、視点、撮影技法の全てあるいは多くを変化させた
写真を挟み込みます、ここでは開放f1.2の超大口径レンズを
シャッター速度が可能な限り絞りを開き、葉っぱ1枚に着目した
写真を撮っています。

田園風景というテーマの連携要素(モチーフ)としては、やや薄く
なりますが、不自然にはならないと思います。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20313751.jpg

↑イメチェンから元に戻し、田園風景に復活します。
田植えが終ったばかりの頃の、若々しい田んぼはなんとも活力や
将来性、未来の収穫、といったイメージにあふれています。

どこまでも続くというパンフォーカス消失点技法で奥行感を表現する
ことで同時に、奥に進む時間の経過、すなわち未来への時間の流れを
映像表現としてテーマの中に組み入れていきます。

技法的には前述の1:9構図を適用しています、空の部分はこの場合
表現上は不要なので、できるだけ極端な構図で切り詰めます。
ただし、このときに建物(家屋)までは切り詰めるわけには行きません、
田んぼの稲は当然の事ながら、米となり、人間の営みに連携して
いきます。
だから、家をはるかかなたに置いて、最終的な収穫のイメージを
暗に含ませておきます。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20321171.jpg

↑イメチェンその2です。
水門、そして田んぼ、あるいは背景の山を絵画的要素の中で
ボケとして扱います、ボケは肉眼でそう見えるわけではありませんが、
写真表現の中では最重要の要素(構図よりも大切)になります。

ボケの量の調整により、時間の経過、あるいは記憶の中、という
メンタルな部分に直結するイメージ作りができます。

このボケを、その条件が無い場所でも、あえて作り出すための、
「牛の散歩」風のオリジナリティの高い撮影技法が「主要被写体の
逆転」の技法になります、これは、たとえばこの写真だったら、
わざわざガードレールの反射板に着目する必要は本来は無いわけ
で、普通に背景にある田園風景を撮ればいい。 でも、ここでは
イメチェンを狙うと同時に、前の写真で未来への時間の流れを表現
しているから、ここでは逆に過去の時間、あるいは過去から続く
歴史や文化や伝統、という要素を入れたいがために、どうしても
被写体をボカして撮りたいわけです。

ピントをあえて被写体からずらしてボカす事も可能ですが、それだと
どこにもピントが合わない、単なるピンボケ写真となってしまいます。
そうしないために、あえて主要被写体とする意味が無い、または
極めて意味が少ない、ガードレールの反射板のような被写体に、
とりあえずピントを合わせておくわけです。 この結果、ピンボケ感
はなくなり、同時に意図するように本来の被写体をボケのイメージの
中に写しこむことができます。これが「主要被写体逆転」の技法です。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20332810.jpg

↑さて「田園風景」というテーマでは、実のところ、単にそうした
「モチーフ」を集めるだけになってしまい、極めてストーリー
あるいは表現が作りにくいです(汗)
これが以前の非組写真の掟でも述べた
「モノを集めてもテーマにはならない」という事です。

「条里制」を意識したところで、所詮は感覚・感情よりもモノと
しての存在が大きい田園ですので、組写真としては極めて
初級編か、または組写真にはならない、と、否定されてしまう
寸前のレベルにあります(汗) 

ここらあたりで、エンディングへ向けて、これまでむしろ撮影技法的な
要素をバリエーションとして持たせておいたのから抜け出さないと
なりません、技法のバリエーションは非常に重要な事では
ありますが、技法だけでは組写真として成り立たないからです。

ここでは遠景にJRの電車を入れています、田園そのものだけでは
単調になりがちなのを回避する意味もあり、また、これまで少し
づつ見え隠れしている「田畑の先にあるものは人間の存在(営み)」
というバックグラウンドテーマを少し意識する必要もあるからです。
斑鳩(いかるが)散歩写真(Ⅱ)~田園組写真編_c0191967_20341867.jpg

↑ラストは、ずばりお百姓さんです。
トラクターなどの農業機械が入っていたとしても、やはり農業の
基本は人手による作業だし、作物もまた人間の営みにからむ
もっとも重要な「食料」であるからです。

人間の存在が無い、たとえばコンテストによくエントリーしている
夕陽の当たった棚田の写真などは、極めて撮る人の考え方の
偏りが見られます、具体的には、棚田が綺麗に見えれば良いとばかり
極端に自分本位であり、棚田の真の意味や価値、あるいはそこに
あるべき背景や目的などの要素がすべて、スッポリと抜け落ちて
います、まるっきり表現の要素が無い綺麗なだけの写真は面白く
ないです。 単写真だったらまだしも、組写真と称して何枚も
同じところで撮った同じような写真を続けて見せられたら不自然を
通り越して不快感にまでつながります、いいかげん、そんなジジ
臭い写真を撮るのはやめたらいいのでは? と強く思います。

****
それにしても、今回「田園風景」と言うのは、ぶっちゃけ言えば
あまりにありきたりのテーマです。 いや、テーマとは何か?
という点では、ほとんどの人が誤解しているポイント。
テーマはモノにあらず、被写体の種類にあらず、あくまで感情、
感覚、表現だと思います。 
なので、今回は、テーマと言う点では極めて薄っぺらい組写真
になったのは否めません・・(汗)

別の言い方をすれば、これだけ色々考えて、これだけ様々な技法
を使って撮ったとしても、元のテーマ性が欠如していれば、
印象に残る写真は撮れませんよ、という事になるかと思います。

引き続き、このシリーズでそのあたりの問題点を掘り下げて
みることにします。

マニアック度=☆☆☆  

by ushinosanpo | 2009-07-30 20:35 | 奈良県  

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